5-1 正面(外面)
『鉢』
鉢は、半球形の本体、腰巻板<こしまきいた>、眉庇<まびさし>で構成されます。
鉢の大きさは眉庇・腰巻板を含めて、前後26.5cm左右24.2cmです。
本体
上から見ると、前後22.0cm以上左右20.2cmと、わずかに前後に長い円形です。
16枚の鉄の板を1列4本の鋲で貼りあわせて半球形にしたものです。
その際、板の縦辺の端を1mm立てて筋<すじ>としました。板の厚さを含めると、高さ3~4mmで、筋は16本あります。
筋を持ち、筋の間が16あるので、十六間筋兜といいます。
腰巻板<こしまきいた>
鉢本体の下部に腰巻板が巡ります。眉庇とシコロを取り付けるものです。
眉庇<まびさし>中央部で幅2.5cmあります。
眉庇の端から徐々に曲げられ、後正中ではほぼ水平です。
天辺<てへん>の穴は直径3cmほどで、やや楕円形です。結った髪を烏帽子<えぼし>で包み天辺の穴から引き出して兜を安定させたのが起源で、後に蒸れを防ぐものとなりました。
八幡座<はちまんざ>などの金具はありません。
天辺の穴の左には、青銅製の円形の鋲が付着しています。X線により開いた足が確認できますが、兜の部品ではなさそうです。
四天鋲<してんのびょう>は、本体下部に4か所付けられ、直径1cm、高さ0.6cmです。
外側からは1か所が確認できません。
眉庇<まびさし>
鉢の前に付けられ、額を守り、日差しや雨をしのぎました。取付角度は鉢前面の傾斜に沿っていて、帽子の鍔のように水平ではありません。
正面上辺の左右に切れ込みがあります。
祓立<はらいだて>が正面に付けられます。前立<まえだて>(飾り)を差し込む台です。
長方形の筒形で、上端が欠けています。長さ7.4cm幅1.4cm。
下位に板が貼り付けられ、長さ4cm、幅1cmで、ほぼ平行です。
『吹返<ふきかえ>し』
吹返しは視界を確保しつつ顔面を守ります。
右の吹返しは、ややゆるく返してやや上を向きます。幅9cm高さ8cm。
小札は1段目12枚・2段目12枚が観察できます。
左の吹返しは、ゆるく返しやや上を向きます。左端が欠けますが、幅9cm高さ9cmで、小札は1段目7枚・2段目11枚です。
2段目の下部には、右吹返し、左吹返しともに2段の菱縫<ひしぬい>(×状)が確認でき、一部に朱が残っています。
『シコロ』
発掘調査での兜発見の際、移植ゴテによる第1撃により後部の一部を欠いています。
吹返しに続くもので、2段の小札板(小札を横につないだもの)により構成されます。水平に開く笠ジコロです。後頭部と首周りを守ります。
シコロは、小札<こざね>を横につなぐ横縫いをした後、漆を塗ります。その後1段目と2段目をつなぎました。1段目同様2段目の下部の穴が抜けていて、3段目があったものと思われます。
小札の数は吹き返しも含めて、一段目が92枚、二段目が121枚です。
小札1枚の大きさは、シコロ後部のもので、長さ6.2cm上幅1.6cm・下幅2.0cm、です。