5-2 逆位(内面)

 当初は、兜が脆弱<ぜいじゃく>で土の上に密着したまま保存処理する予定でしたが、高い技術により、兜単独にすることができました。
 そのおかげで、内面を精密に観察でき、制作や使用の状況を調査できることとなりました。

 

 前正中板<まえしょうちゅういた>・後正中板<うしろしょうちゅういた>には、制作年代や制作者が彫られていることがありますので、詳しく観察しましたが、残念ながら彫り込まれた銘などは確認できませんでした。

前正中板

前正中板

後正中板

後正中板

 四天鋲<してんのびょう>及び響穴<ひびきのあな>は、内面から観察すると、各々4箇所確認できました。
 四天鋲は、腰巻板上端から4.3cmに位置します。

 響穴は平安鎌倉時代、兜の緒<お>を取り付けましたが、後に飾りの組糸を出しました。
 土や錆が付着していて、上面からはっきりと確認できません。
 内面からは、四天鋲の1cm下にあります(中心計測)。径は0.5cmです。

左前(1) 響穴 →印  四天鋲 〇印

右前(1) 響穴 →印  四天鋲 〇印

左後(2) 同

右後(2) 同


右後(3) 同

左後(3) 同

右前(4) 同

左前(4) 同


 

鋲

祓立

 鋲は、1列5箇所あり、最下位(内面写真では最上位)の鋲は腰巻板を取り付ける鉢付鋲と思われます。

 腰巻板には鋲留及び穿孔が見られます。
 鉢付鋲(鉢にシコロを取り付けた)と思われる内面の膨らみや外面の凸部、機能しない3箇所の穿孔があります。

鋲(後正中板)

鋲(後正中板)

鉢付鋲ヵ

鉢付鋲ヵ

鉢付鋲ヵ

鉢付鋲ヵ

3箇所の孔

3箇所の孔