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35 大蛇<だいじゃ>と愛宕様<あたごさま>

お話を聞く

 

 内田ヶ谷<うちたがや>の西のあたりはむかし隣村との境で、一面に茅<かや>が広がっていました。

 

 ある日のことです。村中総出で茅を刈っていると、どこからともなく一匹の大蛇が現れました。赤い舌<した>をペロペロ出しながら、今にも人を襲いそうです。驚いた村人は、一目散に逃げ出しました。

 ところが、逃げ遅れた一人が、あっという間に大蛇に呑<の>み込まれてしまいました。ほんの一瞬の出来事で、大蛇はすぐに消えてしまいました。

 

 「このままじゃあ、おちおち外も歩けねえ」
 「また誰かがやられたら大変だ!」

 村人は相談の結果、皆で大蛇を退治<たいじ>することになりました。刈り取った茅を周りに集め、まわりから火をつけました。火は大きな炎となり、茅の野原を燃え尽<つ>くしました。

 跡には焼け焦<こ>げた大蛇の死体が、大きく横たわっていました、あまりのかわいそうな姿に、村人はたたりを心配しました。そこで大蛇の供養<くよう>にと、愛宕様をまつったということです。

 

※愛宕様の神さまは軻遇突智命<かぐつちのみこと>で、火事を防<ふせ>ぐ神として信じられています。
日本の神話では、母親の伊邪那美命<いざなぎのみこと>はこの神様を産んだために火傷<やけど>をし、黄泉国<よみのくに>(死者の国)へ行きました。
この愛宕様は宝暦<ほうれき>6年(1756)に建てられました。正面に「愛宕山大権現」の文字が書かれ、田んぼにでぇ~んと建っています。明治の始めまでは、村にあった山野院<やまのいん>という寺で管理していましたが、その後、村鎮守<むらちんじゅ>へ合併しました。しかし、不幸が続いたため元の場所に戻されたということです。