12 ボット突<つ>っ切った(ホトトギスの話)
むかし、ある所にたいそう仲のよい兄弟がいました。長かった冬も過ぎ、土手のあちこちに緑が広がり始めました。
そんな、ある日のことです。2人は土手に自然薯<じねんじょ>(山芋<やまいも>)を掘<ほ>りに出<で>かけました。
「ちょっと喉<のど>が乾<かわ>いたから、水を飲んでくらぁ」
そう言って、兄はどこへか行ってしまいました。弟は兄の来るのをずっと待っていましたが、なかなか戻ってきません。
そうこうしている内に、お腹も減ったので、自然薯が食べてみたくなりました。
-こんなにあるんだから、アクビ(芋<いも>の根の先)ぐれぇならよかんべ-
そう思った弟は、端<はし>を少し割って食べてみました。
ちょうど、そこへ兄が戻ってきました。欠けてしまった自然薯を見た兄は、急に怒り出しました。
「俺のいねぇ時に1人だけ自然薯を食うなんて…」
「ちがう、ちがう。あんまり腹が減ったもんだから、アクビならよかんべと思って食ったんだ」
しかし、兄はなかなか納得<なっとく>しません。
「そんなに言うなら、アクビかどうか俺の喉<のど>を切ってみろ!」と弟が言いました。
「よしっ、切ってやる」
怒りの収まらない兄は、そばにあったハバタ(農業で使う刃のついた道具)で弟の喉を切ってしまいました。しかし、出てきたのは自然薯<じねんじょ>の端<はし>っこでした。
「ああ、俺が悪かった。ボット(もしかして)と思って突<つ>っ切ってしまった。許してくれ!」
兄は泣き出しました。すると、弟の喉から一羽の鳥が飛びだし、「ボット突っ切った、ボット突っ切った」と鳴きながら飛んで行きました。
それからというもの…。鳥の鳴き声がそういうふうに聞こえるので、〝ホトトギス〟と呼ばれるようになったということです。